大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)839号 判決
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〔判決理由〕二、<証拠>によると、被告山崎組は昭和四三年五月末に支払うべき約束手形を不渡りにし、そのことが発表され倒産したが、被告金に対しても約金三〇〇万円の債務を負担していたので、他の債権者からの追及を受けるに先立ち、代表取締役被告崔は本件物件を右債務の担保として被告金に引渡したこと、被告崔は勿論、被告金も、本件物件は被告山崎組が原告より代金完済まで所有権を売主に留保する約定で買受けたものであり、当時代金未済で、所有権はなお原告にあることを承知していたこと、原告は右事実を知り、社員をして被告金に、所有権は原告にある旨の事情を明らかにして本件物件の返還を要求させたが、被告金は、被告山崎組に対する債権を同被告に代つて原告が支払うならば返還するとか、一回の分割払で金一八〇万円で売渡せと要求し、引渡しを拒絶し、かつ本件物件の所在を原告に明らかにしないこと、原告では探偵社に依頼したりして本件物件の所在を探索したがなお不明であること、等が認められる。乙第一号証はその成立につき立証なく、被告金本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信できないし、他に右認定を左右するにたる証拠はない。
三、本件物件の所有権は抽象的にはなお原告にあるということができるが、被告金が原告の返還要求を拒絶し、その所在を明かにせずしてこれを隠匿している以上(本件では被告金は本件物件の引渡しを受けたことすら否認している。)原告にとつて本件物件の占有回収は事実上不可能であるということができ、そうだとすると原告は社会通念上本件物件の所有権を喪失したということができる。すなわち被告崔と被告金は共謀して本件物件に対する原告の所有権を違法に侵害したものであり、よつてこうむつた原告の損害を賠償すべき義務があるというべきである。また被告山崎組はその代表取締役である被告崔の右行為につき、商法第二六一条三項、第七八条二項、民法第四四条一項により、右被告と同一の義務を負うこと明らかである。そして被告ら三名の右義務は不真正連帯である、と解される。
四、<証拠>によると、被告崔が被告金に本件物件を引渡した昭和四三年六月頃の業界での本件物件の下取価格は金三〇七万円であることが認められるから、右物件の当時の時価はこれとほぼ同額と見られる。しかし原告が本件物件の所有権を留保して売渡していたのは、その代金債権の支払を担保するためであることは明らかであるから、原告が本件物件の所有権を喪失したことによつてこうむる損害は、よつて返済を受けられなくなつた代金債権相当額であるということができる。被告山崎組は手形不渡りを出しすでに倒産しており、残代金を支払う能力はないと認められるから、原告の右損害は残代金二〇九万六、〇〇〇円相当である。 (野田栄一)